ヨーロッパ型資本主義―アメリカ市場原理主義との決別 (講談社現代新書)

ヨーロッパ型資本主義―アメリカ市場原理主義との決別 (講談社現代新書)


ヨーロッパ型資本主義―アメリカ市場原理主義との決別 (講談社現代新書) ヨーロッパ型資本主義―アメリカ市場原理主義との決別 (講談社現代新書)
講談社 講談社
¥ 756

アメリカ型資本主義を嫌悪するヨーロッパ
持続可能な経済発展―ヨーロッパからの発想
日本型資本主義と市場主義の衝突―日・独対アングロサクソン
市場には心がない―成長なくて改革をこそ
「ヨーロッパ合衆国」の正体

■ヨーロッパ型資本主義は民主党に通ず 評価5 日付2007-09-03
 圧倒的な軍事力を背景に、独善的な単独主義と市場原理主義に邁進するアメリカに対しては、世界各地から批判がますます高まっている。しかしアメリカに本当に対抗できる地域はといえば、いまのところヨーロッパ(EU)以外にはないだろう。
 本書は「アメリカ市場原理主義との訣別」という副題が示すように、アメリカとは一線を画したヨーロッパの資本主義を福祉重視型と捉え、その内容を基本理念から税制や環境問題まで紹介した好書である。(第2章)
 また一章をイギリスの資本主義の説明に割いているのは、大陸ヨーロッパよりも遅れてEU加盟したイギリスが、アメリカ型からヨーロッパ型へと変わろうとする資本主義の進化の実験場の様相を示しているからだろう。(第3章)
 だが本書の本当のねらいは、アメリカ型資本主義に追従する今日の日本のあり方、ずばり自民党型資本主義に対する批判でもあろう。大企業優先、福祉(弱者)切り捨てといった自民党政治がもたらしたものは格差の拡大である。雇用・預金・年金など不安がつきまとう今日の日本社会にあっては、安心して暮らすことが難しくなっている。この是正を託せるのは、当面自民党よりも民主党だろう。自民党がアメリカ市場原理主義型だとすれば、民主党はヨーロッパ型福祉重視資本主義をめざすことを明確にすればいいと思う。

■ヨーロッパの資本主義を究明 評価5 日付2006-02-21
 
 現今の日本は、アメリカ直輸入の市場原理主義が席巻し、株主利益の極大化(株主価値の最大化)などが声高に叫ばれ、資産資本主義・カジノ(ギャンブル)資本主義の様相を呈しており、その暗部も露顕している。しかし、目を少しばかりヨーロッパに転じてみると、そこには非アメリカ型の資本主義が確固として根付いていることが本書で判る。

 この書帙は02年の刊行であるけれども、所得格差の拡大を当然視する「小泉構造改革」によって“アメリカニズム”を刷り込まれつつある日本人には、やや馴染みの薄いヨーロッパ、特にドイツ、フランス、イギリスそしてEU(欧州連合)における資本主義(社会)の理念や歴史、経験等を講明したコンパクトな解説書である。

 もとより、資本主義の多様性を前提とするならば、理想的な資本主義モデルなどは存在しないかもしれない。だが、「長い歴史と豊かな思想が生んだヨーロッパ」(本文)の発想に基づく、アメリカ・モデル(市場主導型資本主義)とは全く質の違う、“社会性”を重視した資本主義を知ることは決して無益ではないだろう。

 何よりも、「知恵のある強力な政府」による福祉や環境などに配慮した、換言するならば「人間の顔をした資本主義づくり」(同)を目指しているヨーロッパ。殊に、秩序自由主義に基づいた社会的市場経済体制を確立している「ライン型資本主義」(ミシェル・アルベール)の代表であるドイツから、日本が摂取すべき点は少なくないと勘案する。 
■欧と米は異なる 評価5 日付2005-12-10
 私たちは西洋諸国を指すとき欧米諸国と呼ぶことが多い。しかし米国とヨーロッパでは社会の仕組みや政治の制度など大きく異なるものも数多くある。勿論、ヨーロッパの中でも国によって様々な相異があるのは事実である。
 現在、わが国で経済システムの改善を含んだ構造改革が取組まれており、国民からの関心も大きい。この取り組みの中で日本は外国の事例を学びながら、実行をしていくが、政策実行者、すなわち内閣やその諮問機関が説明するときに欧米ではと言うときに指す国は米国+英国であることが多い。
 作者は、その非常に大雑把で乱暴な言葉の使い方に疑問を呈し、幾つかの資本主義モデルを提示した。現在、わが国のモデルとなっているのはアングロ=サクソンモデルと呼ばれ、市場主義を一層促進させるモデルで英国サッチャー首相の政策や米国レーガン大統領の政策に非常に近い。
 作者はどのモデルが優れているかということより、それぞれのモデルの特徴を明らかにすることを重点を置いている。しかし、幾つかのモデルに関しては問題が大きいことも指摘している。
 これらを総合するとアングロサクソン型という一つのモデルに依存しているわが国の構造改革の脆さが露呈されているように思える。特に小さな政府による公共による社会投資の少なさが今後問題になるかもしれない。
 またその特徴も現れ始めている。短期利益回収型の経済モデルの顕著化である。昨今のベンチャー企業や投資信託会社による株主本位の経営の主張がその象徴である。
 果たして現在目指しているモデルが正しいのか?検証もなく突き進んでいる現状は非常に危険であり、作者の意見は現在の状況を予測しているようであったと思う。
■資本主義のルールについて考えさせられるEU経済の入門書 評価5 日付2003-10-13
米国の市場万能・自由主義的資本主義への批判と欧州の福祉国家型資本主義の賛美が本書の主な主張ですが、EU経済史として非常に良くまとまっておりますし、英、仏、独の実情についてもコンパクトながら触れられています。本書を読んで、近時の米国におけるSarbane-Oxley法の制定なども含め、経済活動のプレーヤーにどのようなルールを守らせるか、そして資本主義のタイプを規定するルール作りがどうあるべきか、を考えさせられました。
出版のタイミングが9・11のすぐ後だったこともあって、中東情勢について陳腐化した記述もあり、日本経済への言及も若干中途半端な感もありますが、EU経済の入門書の最初の一冊としてお奨めします。
■米国だけでなく欧州も参考に 評価5 日付2003-02-09
日本で今叫ばれている改革は、基本的に米国型の競争原理・市場原理主義の
導入です。たしかに肥大化した日本の行政のスリム化は必要ですが、
「それだけでいいのか」と感じている人も多いはず。
そんな人に是非読んで欲しい本です。
日本は、改革に当たっては米国だけでなく大陸欧州も参考にすべきでは
ないでしょうか。
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