世界を不幸にするアメリカの戦争経済 イラク戦費3兆ドルの衝撃

世界を不幸にするアメリカの戦争経済 イラク戦費3兆ドルの衝撃


世界を不幸にするアメリカの戦争経済  イラク戦費3兆ドルの衝撃 世界を不幸にするアメリカの戦争経済 イラク戦費3兆ドルの衝撃
徳間書店 徳間書店 楡井 浩一
¥ 1,785

格差はつくられた―保守派がアメリカを支配し続けるための呆れた戦略
壊れゆくアメリカ
神社仏閣に隠された古代史の謎
暴走する資本主義
在日米軍司令部

■石油高の元凶はイラク戦争という視点はユニークだ!! 評価5 日付2008-08-06
スティグリッツ教授(2001年「情報の経済学」によりノーベル経済学賞を受賞)の最新作。今回は財政のエキスパートのリンダ・ビルムズ女史との共著だ。原題は”The Three Trillion dollar war"(三兆ドルの戦争)となっている。

スティグリッツ教授は、ブッシュ政権当初から、首尾一貫してその経済政策と世界戦略に警鐘を鳴らしてきた。この著では、イラク戦争で、アメリカのみの戦費として3兆ドルの戦費がかかる見通しだという。そしてイラク戦争が、アメリカ経済に未曾有の混乱を招き、それのみならずグローバル経済全体に混乱を生じさせたとズバリ指摘する。その上で、日米欧の相対的な力は落ち、結局、原油高を招く直接の元凶になったことを経済学の手法で綿密に分析してみせる。

私たちは、これまで原油高の主な原因を、第一に新興国の経済発展で需給がひっ迫したこと、第二に投機マネーの暴走と単純に図式化してきた。しかしスティグリッツ教授は、私たちの常識的判断をひっくり返して「石油価格の上昇は、開戦とほぼ同時期に始まった。・・・ざっくりとした計算だが、イラク戦争以降の価格上昇分のうち、ちょうど半分をイラク戦争の影響とみなし」と仮定しているとあっさり指摘する。漠然とブッシュ政権が始めたイラク戦争にいち早く支持を表明したのは日本の小泉首相ではなかったか。 

現在サブプライムローン問題とイラク戦争の影響は、アメリカの国際的な地位を低下させ、その結果ドルまで暴落の危機の途上にある。小泉政権以降、特にブッシュ政権一辺倒で進めてきた外交方針が、ここに来て日本そのものの国際的地位と信用の失墜に繋がっている今こそ、私たちは現在の世界経済の動向をもっとも鮮烈に分析するスティグリッツ教授の言葉に耳を傾けるべきだ。まさに日本の政治家、ビジネスマン必読の書だ。私はこの書を読みアメリカ社会の奥深さに触れる気がした。
■アメリカの支払った代償はあまりに大きい 評価4 日付2008-07-20
 サブプライムローン問題に端を発したアメリカ経済の先行きが怪しくなっている。原油高も、アメリカの株式市場から投機資金が逃げ出して、もたらされたというのが通説となっている。

 これは、反グローバリズムを一貫して主張し続けてきたスティグリッツ氏によるイラク戦争への批判の書である。
 氏の分析によると、イラク戦争のためのアメリカが支出するコストは将来分も含めて、なんと3兆ドル(!)に上り、すでにベトナム戦争を上回っているという。
 また、現在の原油高のきっかけは、明らかにイラク戦争による中東情勢の不安定化が大きい。
 今のイラク情勢を落ち着かせるためには、派兵による増派しかないというのが定説のように思われるが、著者はそれも無駄なことと切り捨てる。

 以上を踏まえた上で、直ちにイラクからの全面撤退を主張している。
 加えて、今回の反省から同様の過ちを繰り返さないために、18の具体的な提案をしている。

 これからの大統領選が見ものであるが、新政権がイラク問題をどのように取り扱うにせよ、アメリカの支払った代償はあまりに大きい。

■アメリカ版特別会計 評価5 日付2008-07-19
 イラク・アフガン戦争によるアメリカ経済のコストが3兆ドルに上るという事実を詳細に検証した本書。単純な駐留費に加え、帰還兵への各種ケア、累計で100万人近い若者が経済活動を離れることによるGDPへの影響、そして膨大な戦費によって抑制されるその他の公共投資の影響も含めた数字だ。当然、最初からこんな数字を出していたら開戦なんて支持されるわけがない。武器装備のストックを消尽し、正規兵から外部業者委託へシフトし、そして期間後のサポートを削り、それでも足りない分は緊急支出予算として議会を経ずに処理される。その詳細な配分は誰にも分からず、まるで日本の特別会計のよう。
 巻末の提案にはしっかりとアカウンタビリティの確保がうたわれ、費用対効果の検証が提起されているが、これは日本の小泉・竹中改革で打ち出されたものと同じだ。やはり、外部からのチェックなくして、暴走は止められないということだろう。
 


■戦争会計の重要さ 評価4 日付2008-07-13
軍事費はもともと詳細がはっきりとしない典型であるが、本書は通常発表される軍事費以外の本当のコストを戦争会計として捉え、その現実を我々につきつけている。戦争自体を正当化するコストベネフィット分析はありえず、本書の意義はどの様な政策(戦争もその一つ)を実施する上での透明性のある政策会計的な発想が非常に重要であることを主張している点。
本書の最後に出てくる18の改革提言は非常に重要な意味をもつ。
ブッシュ政権批判、イラク政策などの部分に関してはいろいろ意見が分けれる部分も多々あると思うが、上記の点に関しては文句なく参考になる。
■右翼も左翼も必読の書 評価5 日付2008-06-22
何とはなしに手に取った書であるが、まさに目から鱗がおちる思いであった。

内容は様々な経済学的な手法を用いて、詳細に、しかも公平にイラク戦争に使われた資金の全体像を明らかにした2006年の論文を、一般人向きの解説を加えて記載したものである。
その結果、イラク戦争の資金は、低く見積もって3兆ドルになるという。
戦争をイメージするときに、過去の世界大戦を念頭に議論が行われることが多い。
しかし、高価なハイテク兵器がぶつかり合い、また医療の発達により負傷兵士死亡率が著しく低下した今日の戦争がコストの面でも、過去の世界大戦とまったく異質のものになっているのは想像に難くない。しかし、問題はその実際の費用がどうなっているのかという点である。
まず、危険に対する保険費用の支払いが重く圧し掛かり、それらは戦争期間の延長、被害の増加とともに増大していく、そして、以前であれば死亡したはずの兵士を、戦後、「障害者」として生涯にわたり支えるための医療保障、社会保障費用が膨大になるという事が明快に示される。
そして、この費用の試算により、戦争が、兵士人生の搾取に成り立っているという、当然の事実が浮き彫りにされ、その点に大して筆者たちの、厳しい怒りが感じられる。
さらに、社会学的、マクロ経済的な影響を考えると、天文学的な費用がかかるということも、本書では、詳細に示されていく。
当然のことながらこれらの試算は今回、アメリカが支払った/支払う費用であり、イラクやアフガニスタンの側の負担は全く含まれていない。今回、本書では述べられなかった地球温暖化に与える影響も、今後は戦争当事国が支払うことを要求される時代になるであろう。

本書が示した事実、戦争は生命と財産の両面(そして地球環境にも、天文学的な費用(ものすごく少なく見積もっても3兆ドル)がかかるという事実は、戦争のイメージ(いくら持っていたら戦争を始められるのか?)に大きな変革をもたらすだろう。
大変骨が折れるが貴重な仕事に、まじめに取り組んだ本著者らの厳格な姿勢には畏怖すらも感じられ、本書の行間から彼らの一途な姿が感じられた部分では、涙を禁じえなかった。

本書の試算が間違っていないとすれば、今後、局地戦のコストですらそれを賄うことのできる先進国は、世界一の軍事経済大国アメリカ以外に無いということではないのだろうか。そして、このような無駄なお金を、別の生産性のある事業に費やすれば、どれほど生産的な活動が出来るだろうかという、筆者らの考えには心から賛同する。

私もこの書を読むまでは、憲法改正が正しいと考えていたが、今日の世界では戦争は誰にとっても実に高価なものになってしまったのである。

だとすれば、アメリカの純粋若者たちが、理想を文書化した日本の"SF"憲法を盾に取り戦争に巻き込まれるの防ぐ形で国益を守っていき、そのような無駄を環境問題を含めたより現実的で有用出費に変えていくことこそが、日本の繁栄を手に入れる有益な手段となることであろう。
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