マルクス入門 (ちくま新書)

マルクス入門 (ちくま新書)


マルクス入門 (ちくま新書) マルクス入門 (ちくま新書)
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マルクスる?-世界一簡単なマルクス経済学の本

■マルクスの多面性に触れることが出来る 評価5 日付2008-02-24
就職してから読んだ「ドイツ・イデオロギー」(花崎訳がお薦め)や「共産党宣言」には強い印象を受け、「何や、俺のこと書いとるやんけ」と思った記憶がある。学生時代には多分わからなかったであろう分業や生産手段、階級などの実質的な意味がスッと理解出来たし、国境を越えた商品流通の進展がローカルな共同体や文化を破壊する様子を描いてるところなどは、まさに今日のグローバリズムの課題を160年も前に予告している訳で、その先見性には驚かされるばかりである。

さて、今村氏晩年の本書である。マルクスの持つ多面性を周到に描き出しており、まず渾身の力作といっていい。

商品の「物象化」(=ブランド商品の氾濫)や、「自由な個人」と「商品経済体制」の成立は同時的であること(=消費社会における孤独感)、市民社会における「公民的共同体」と「経済的私人社会」の二つの分裂が最終的には後者に収束されていくこと(=経済至上主義とモラルの低下)など、いかにマルクスが現代の社会現象を先取りして分析していたかがよくわかるし、ハイデッガーのゼミでマルクスが読まれていたことなど、びっくりするようなことも教えてもらった。

個人的に面白かったのは、変革の実践主体としての「プロレタリアート」は、「概念」としての階級であり(つまり、フィクショナルな存在)、それが即、労働貧民を指すのではなかったという話。文化大革命やポルポト政権による「ブルジョワ」の弾圧・虐殺を経た今日では、ただの言い訳にしか聞こえなくもないが、マルクス自身の中でも「実在の下層労働者階級」と「理想化(抽象化)された変革主体としてのプロレタリアート」が混在していたのだとは思う。

これを読んで思い出したのが、浄土仏教の「悪人正機」の考え方。インテリやブルジョワジーよりも、「悪人」が優先的に救済される(べき)という考えは、「悪人」という存在を、単に「倫理的に罪を犯している人」という意味だけでなく、「職業的に禁忌に触れざるを得ない(下層)労働者」(農民・漁師・猟師・産婆・処刑人、さらには武士など)と捉えれば、マルクスの階級観念との共通性を感じる。同じく浄土仏教の「往相」「還相」も、吉本隆明などがよくキーワードとして使っているが、極めて弁証法的な考え方である。マルクスを深く読み込んだ吉本や今村が、同じように親鸞に魅かれるのも、こうした側面があるからだろうか、と思ったりした。

私自身、本書には非常に啓蒙されたが、既に何人かの方が指摘されている通り、入門書としては確かにハードルが高く、むしろ本格的なマルクス論としての密度の高さは、単行本で出してもいいくらいのものだ。ある程度、この分野の本を読んできている人には、非常に示唆に富む、知的刺激に満ちた一冊となろう。
■次の第一歩を踏み出せるか 評価3 日付2007-05-26
著者は「いまマルクスは忘れられたひとである。しかしマルクスは忘れてはならないひとである」と説き、そして「なぜマルクスは忘れられたのか。なぜマルクスを忘れてはならないのか」と問う。言うまでもなく、マルクスが「忘れられた」のは、20世紀最大の実験国家であったソビエト連邦の解体とその社会主義体制の崩壊が決定的に作用したためである。

しかし、ソビエト連邦の解体や社会主義体制の崩壊が、本当にマルクスの思想に近因しているかと言えば、必ずしもそうではない。ソビエト連邦が掲げたイデオロギーである「マルクス=レーニン主義」(スターリン主義)は、マルクスの思想を必ずしも正しく体現したものではないのである。そして著者は「いうまでもなく、マルクスとロシア『マルクス主義』を同列に扱うことはできないのだが、そう主張するのは一部の専門家のつぶやきでしかない」と嘆く。

つまりマルクスの思想は、レーニンやスターリン、ひいては毛沢東などの政治指導者が、その解釈権を独占して権力を握ってきたため、その問題が必ずしもマルクスへと直接的に還元されるわけではないのである。それを著者は「マルクスは解釈された種々のイメージを帯びていまもなお思想と文化の領域を『幽霊のように』徘徊している」と言い、150年の歴史の中で培われた解釈を簡単に無視することはできないが、その解釈図式の特徴や有効範囲を確認した上で活用することを説いてマルクス解釈の三類型を説明している。

そして本書の帯に記されている「初めてまっさらなマルクス。さまざまな党派・主義・思想の手垢にあみれてきた巨人マルクスが今まっすぐによみがえる」と言うのは、これを基にしてマルクスの書物を読んで初めて達成されると言える。つまり本書にマルクスの書物を読むための基礎知識が詰め込まれていると言う意味では、確かに「入門」と言えるだろう。

しかし、本書で示された壮大なマルクス思想体系に挑むため、次の第一歩を踏み出すには相当の勇気がいるのではないだろうか。もちろん本書もなく、安易にマルクス思想体系に踏み込んだ者は、おそらく迷宮に足を踏み入れてしまったようなものであろうが。本書を乗り越えてマルクスにチャレンジできる人間が次々と現れれば、本当の意味でマルクスが「よみがえる」のであろう。本書は、その一助となることを目指した書物であると言える。
■入門ではない 評価3 日付2007-02-24
 各方面に偉大な影響力を及ぼし続けているマルクスについての入門書ということだが、十二分に難解で、キーワードを太字にするなどの工夫は見られるが、やはりとても入門書とは言いがたいレベルである。
 様々ななマルクス像を概観したあと、「ギリシア人」的性質や文明史における資本主義の位置、ヘーゲルとのかかわりなどのトピックを論じている。やはり、ある程度以上の教養と知識がないととうてい読みすすめることは難しく、タイトルに問題があるといわざるを得ない。
 いささか皮肉めくが、マルクス思想の体系が極めて難解かつ壮大で、にわかに手を出しにくいものだということはつくづく痛感できるかもしれない。
■全く入門編になってません 評価1 日付2006-04-27
最終的にはマルクスの思想源流の哲学にまでさかのぼって説明して来る所がくどかった
文章も難解で注釈多数
社会主義・共産主義入門ではなくマルクスという思想家/学者の入門書ですが
やっぱり「資本論」を未読の人にはいまいち分かりづらい脈絡からの解説だと思います
どちらにせよマルクスを知りたければ薄くて安い基本的入門「賃労働と資本」と「賃銀・価格および利潤」を真っ先に読んでおけばいいでしょう
■ちょっと難しいが、面白い 評価5 日付2005-10-10
入門書といっているが、マルクスをあまり知らない私には少し難しかった。またこの本を読んだらマルクスの概略がわかるというものでもないと思う。いちお弁証法、唯物論、物象化、フェティシズム、疎外、プロレタリアートなどの概念について言及されてはいるが、それは基礎知識を持った人に対しての説明であって、このような言葉を初めて聞いたというような人に注意を喚起して説明するというようなことはしていないような気がした。ということで、マルクスをまったく知らない人には少し不親切なつくりのような気がしないでもない。
しかし、序章のマルクス主義の3潮流の説明から始まって、マルクスが何を問題にし、どのような経過を辿って資本論を書くに至ったか。マルクスは一体どのような社会を理想としていたか、といったことを、著者なりの理解であるらしいが、筋道だって示してくれているため、興味深く読むことが出来た。マルクス主義を少しかじった程度の人がもう少しマルクスを知りたいと思ったときに最適な本ではないかという気がする。
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