キャッチアップ型工業化論―アジア経済の軌跡と展望

キャッチアップ型工業化論―アジア経済の軌跡と展望


キャッチアップ型工業化論―アジア経済の軌跡と展望 キャッチアップ型工業化論―アジア経済の軌跡と展望
名古屋大学出版会 名古屋大学出版会
¥ 3,675

後発工業国の経済史―キャッチアップ型工業化論
進化する多国籍企業―いま、アジアでなにが起きているのか? (新世界事情)
Development As Freedom

■アジア経済論の研究のための導きの書 評価5 日付2005-03-30
 本書は、戦後のアジア経済の発展をキャッチアップ工業化という視点から捉えた、新しいアジア経済論とも呼ぶべきものである。
著者によれば、キャッチアップとは、政府の開発主義を含む、政府の強力な介入による、組織の改変を含めた急激な外国技術・資本などの流入とその改良による工業化である。その中心的テーマは、工業化の社会的能力―外国の技術を導入し、普及させ、改良していくため社会全体の能力―である。
 本書は、工業化の社会的能力を構成する「担い手」とその枠組みに注目する。そしてその構成要素として、イデオロギーとしての「開発主義」の形成・輸入代替・輸出振興・産業政策などの主要な政策の展開、企業(国営・公企業、多国籍企業、ファミリービジネス)の活動、技術の導入と形成、労働市場と労使関係、教育制度と職業選抜などの各テーマが、既存研究をサーベイの上で、タイの事例を交えながら議論されていく。
 本書の問題関心は、最終的に、技術改良を継続する社会的なイノベーション能力の構築というテーマに行き着く。そしてその理論体系として近年アジア諸国の開発政策において政策的に大きな影響力を持っているポーターのクラスター理論の紹介とその批判的検討へと到達する。
本書はこれまでのアジア論、そして著者の研究の集大成である。ミクロ的な分析の積み上げを様々なマクロ経済データの時系列的変遷の解釈につなげる試みがないのが残念であるにしても、この分野の研究に関心のある人々にとって、大いに参考に出来る良書である。  
 著者は最後に、開発がもたらした競争主義でゆがむ社会の変容を憂い、「開発主義と成長イデオロギーをどう克服するか」という問題提起を残して本書を終える。何らの展望なき問題提起は研究書としてはある意味唐突であるが、それだけに解決の糸口の見えない問題の根深さを物語っており、根本的な価値転換の必要性を示唆しているようにも思える。
■地域研究の粋を体系化した膨大な読書ノート 評価5 日付2004-09-22
著者はタイの経済発展を専門としているが、本書では教育・家族・政治まで含めたアジア経済論の全貌を描こうと試みている。内外あわせて数百冊に及ぶ文献リストを見ていただければよく分かるはずである。

開発経済論というと、対象国も広いが、アプローチひとつとっても、比較歴史分析・社会経済史などの歴史的なものから、公共選択理論を前面に出した数理的なものまで多岐にわたる。本書はその広大な領野の優れたマッピングを描いている。しかも単なる概説ではなく、「キャッチアップ型工業化」という視角でまとめきっている点がよい。

なお、名大の紀要『経済科学』には、竹内常善教授が本書について評を寄せている。確かなレヴューであると同時に、大学の教科書のあり方について示唆を得ることが出来よう。
■これから経済学を勉強したい人にも。 評価5 日付2003-04-08
 
 経済学を勉強したいけど何から始めてよいか分からない。そんな人にこの本をお勧めします。
 需要と供給といった経済の仕組みを勉強する前に、どうやって経済発展は進められていくのか?を知ったほうが、
今現在の経済状態を理解するのに効果的だと思うからです。

 アジアのタイを中心に本書は展開されていますが、そうしたアジア経済の歴史は、かつての日本経済の歴史と重なります。
 しかも本書のよい所は、同時になぜ日本が停滞したのか?の疑問にも東アジアの例をとって見事答えてくれるからです。

 経済発展はどの様に始まるのか、日本はアジアでどの様な位置にいるのか、日本が経済大国へ進むためにとった方法とは?
 さらに、グローバリゼーションとはどんな影響をもたらすのか?まで
、厚いこの本の中には、これら濃い内容が含まれてます。
 決して入門の本ではないので難しい話や語彙も出てきますが、気にせずまず読破してみてください。

 尚、この本を読んで経済に興味が沸いた人には、次に「開発経済論」を手にとってみるといいのでないかと思います。
 難しくて流し読みした部分が補えると思います。


■アジア経済論の新テキスト 評価4 日付2001-11-03
アジア経済に関しては洋書・邦書を問わず夥しい数の書籍が出版されているが、アジア経済の発展についてしっかりした分析フレーム・ワークを提示して論じているものは少数である。本書はアジア経済の高度成長を「キャッチアップ型」という新しいフレームワークを提示して論じることで、アジア経済の工業化の経路、経済発展のメカニズムを明らかにし、アジア経済の将来展望を試みている。統計を含む文献案内も充実しており、アジア経済について関心をもつ学生、ビジネスマンにとってはアジア経済論のテキストとしても優れている。

キャッチアップの終盤においては、当然、次の段階に向けて工業化路線にも変化が求められる。しかし、次のステップをどのように踏み出してよいのかが明確でなかったり、たとえわかっていても変化への対応が柔軟になされていないことに、中国を除く近年のアジア経済の停滞の一因があることが示唆される。

日本を含むアジア経済の将来を展望するとき、単に新産業の育成や個々の企業の成長といったことだけでなく、これまでの「キャッチアップ型」の工業化を背後で支えてきた社会的通念や組織・制度にいたるまで見直しをしつつ、新しい「キャッチアップ型」の工業化を模索していくことが必要であり、その根幹は飽くまでモノ作りにあるというのが著者の主張である。

本書は「キャッチアップ型」というモデルで捉えることでアジアの経済発展の特徴を浮き彫りにしており、概説書からは得られない読みごたえがある。


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