鈴木敏文の「統計心理学」―「仮説」と「検証」で顧客のこころを掴む
著者によると、鈴木敏文の発想の根本には、「時間軸で変化の流れを大きく捉える視点」「時間軸を輪切りにし断面を見る視点」「時間軸で未来から見て今を位置づける視点」「脱経験的思考」「陰陽両面的志向」の5つの視点があるという。ここで述べられている「時間軸」の概念は、一流の経営者がよく口にするものであり、この「時間軸」を考慮に入れるのと入れないのとでは、物事のとらえ方が大きく異なってくるようだ。
また興味深いのは、鈴木敏文が「メタ認知」に優れているという指摘。これは、著者の言葉を借りれば、「自分の頭のなかに『もう一人の自分』がいて、今の自分の思考を、もう一段上から客観的に見て判断する」能力のことであり、勉強法で有名な和田秀樹も指摘している優れたビジネスパーソンの資質である。
このように本書では、優れたビジネスパーソンに必要なさまざまな資質・視点を紹介しているが、もっとも注目したいのは、鈴木敏文が日頃、いかにして情報をとらえ、その裏に隠された真実を見抜いているか、という点である。情報の先にある「顧客の心」にまで迫っているあたりは、さすが小売業界の重鎮。小売業に携わる読者に限らず、得るところの多い1冊である。(土井英司)
鈴木氏は現場主義を唱える経営者が多い中で他店見学を禁止している異色の経営者である。が、本書を読むとその真意がわかる。つまり、絶対的価値の追及では見るべきものは他店(他店比較の客観的価値)ではなくお客のニーズである。
また、鈴木氏はデータ主義である。POSシステムから毎日あがってくる、活きたデータを仮説検証型で読み説いていく。その根底には、昨日の客と明日の客は違う、明日の客の心を掴まないといけないという想いがある。単純に売れた分だけ仕入れるのではなく、客の心理を読んで仮説を立てて商品を仕入れ、結果をPOSデータで検証するのである。
現場主義では現場の客はよく分かるがミクロをみてマクロを見落とす危険がある。データ主義はマクロで見てミクロに落とし込む経営であり、より本質を重視するアプローチである。これは、大前研一氏の「本質を見抜く思考力」や花王の元社長、常盤文克氏の「質の経営」に通じるものであると思う。
この視点をビジネスの世界で実践するには、データを見る時に、Why(それはなぜなんだ、どうしてそうなのか)とWhat(顧客のために何をすべきか、何が求められているか)を常に考えつづけることが大事である。実行段階では、How(どのように行うか)も重要であるが、WhyとWhatの問題意識に基づいた仮説・検証の力がそれにも増して重要である。
本書はとても読みやすい。が、鈴木敏文氏の凄さが分かり、仕事を進める上で役に立つ示唆に満ちた本だと思う。
鈴木会長本人が書いたなら、本書での分析ができないでしょうから、ライターを起用したことは成功だと思います。
ところどころ、著者の主観が入っているところが気になりますが、55の金言だけでも、読み返したい内容になっていると思います。
でもまぁ、世の中、優れた人はいるものですね。
凡人は嫉妬してしまいます。
セブンイレブンの経営の凄さは 同じく流通業界のはしくれにいる小生にも感じることであるが 十分納得させられた。宗教にも近い 会社方針の落とし込みを描く「火曜日の会議」の様子には 正直嘆息させられ 自分の職場にも応用が利かないものかと考えさせられた。
特に「仮説と検証」という言葉が いわば 呪文化してセブン1万店の上に君臨している様相は凄まじい。
ある意味で日本が生み出した独創的な企業文化であると思われてならない。日本人も捨てたものではないか。